【後編】「土で遊び 土を焼く」作品展示会直前レポート〜野焼きワークショップ〜
今年度、NPO法人WHITE CANVASさんの「障がい者と地域を結ぶオープンアトリエ事業」を助成事業で支援しています。NPO法人WHITE CANVASさんは重度の障がいを持つ大人のためのものづくりのアトリエ(生活介護事業所)「TIME WARP」をコロナ禍突入とほぼ同時にスタートさせました。「ものづくり」という、年齢属性関係なく楽しむことができる豊かな体験を通して、障がいのある方と地域が出会い知り合う機会として本事業の活動をされています。
来る10/25-29に今回の取り組みを通して生み出された作品の数々を高橋節郎記念美術館にて展示するのを前に7月からスタートした本事業を2回にわけてレポートしたいと思います。
後半はいよいよ野焼きワークショップです!(前編はこちら)
土で遊び、土を焼く。野焼きワークショップ
先日、長野県安曇野市で開催された「野焼き」のワークショップに足を運びました!
実際に陶芸家として活動している先生ご指導のもと、3日間に渡りワークショップが開催されました。共に粘土をこね、焼き窯を作り、焼き上げる。子どもの自由で朗らかな作品から、大人の緻密な作品まで。
参加者全員で協力し合いながら、思いの詰まった作品を完成させたその魅力をお伝えします!
〜野焼き編〜 day1
このワークショップでは、粘土の作品制作だけでなく、その焼き上げに必要な窯づくりのプロセスも大きな魅力の一つでした。
窯づくりは、まず適切な場所の位置決めから。安定した場所で、風の通り道や安全性を考慮して決められていきます。ここはNPO法人 WHITE CANVASの畑の中。ゴン先生*が適切な場所を選定してくれています。紫蘇のいい香りが食欲を誘い、思わずトマトを摘んでしまいそうに。。
窯づくり
窯づくりの材料は、ダンボールやレンガ、ホイールなど。身近な素材が中心となって形作られていきます。皆で集まって、一つの窯を作り上げる!という目標のもと、試行錯誤を繰り返していきました。
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窯の土台づくり。ダンボールの煙突が大事! -
炭を敷き、作品を乗せていきます -
隙間がないように作品を埋めていきます -
ダンボールで形を整え、隙間を詰めていきます
窯づくりは、単に粘土や石を積み上げる単純な作業ではなく、参加者皆さんのコミュニケーションの場でもありました。良い作品は良い窯づくりから!と、年齢や経験を問わず、皆んなで意見を出し合い、焼き上がる作品を想像しながら、丁寧にひとつひとつ作品を詰め、土台を作っていきます。完成が楽しみです!
窯形成
なんといっても窯づくりで一番に盛り上がった窯の形成!柔らかな粘土を使い、土台の上に大胆に乗せていきます。ねっとりとしたその質感は独特で、子どもも大人も、思わず「あっ!」という声が漏れてしまいます。
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完成した窯に草木で模様を描く班も -
こちらの班には佐官職人が!圧巻の曲線美
この窯形成、土台の上に粘土を乗せていく作業が実はとても難しいんです!
見た目は簡単そうに見えますが、実際には、しっかりとした窯の形を作ることは、簡単ではありません。均一な厚さ、重さで粘土を乗せ、均整の取れた形に仕上げていく。参加者の皆さんも少しずつコツを掴んでいき、作品を詰めた土台を包んでいきました。大事なプレゼントを包むように、たくさんの作品が詰まった山を粘土で包んでいきます。
次はお待ちかね、焼きの段階へ!
焼き
繊細な火加減が重要な焼きの作業。窯の土台づくりや形成と並ぶ重要なステップです。じっくりとした火加減で焼き上げを始めるため、一度火を入れた炭を窯の中に置き、その様子を観察していきます。
一度炭が入ると、あとはじっくり焼き上がりを待ちます。作業することはあまりありませんが、参加者の皆さんにとって一番のワクワクした時間のようでした。みんなが窯のまわりに集まり、真剣に、でもワクワクして、窯を見守っていきます。
パチパチパチッと窯の中の変化を待つ時間、焼き上がる作品への期待感を参加者の皆さんと全員で共有できる一体感はなんとも言えない奥深さです!
〜野焼き編〜 day2
ワークショップの最終日、待ちに待った焼き上がりの時間がやってきました。いよいよ、自分たちの作品とご対面です
焼き上がった窯は慎重に取り扱われます。火傷や窯の崩れに注意しながら、作品の様子を見ていきます。自分たちが試行錯誤しながら作った窯が完全に焼き上がり、ほろほろと崩れそうになっている姿に、ますます作品への期待感が増していきます!
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窯を少しずつ崩していき、作品が顔を出しました! -
焼き上がった作品たち。これが既に作品のよう
窯を少しずつ崩していき、焼き上がった作品を取り出していきます。
作品を一つひとつ取り出す作業は、まるで遺跡の発掘作業のような感覚。焼き前の姿とは異なる、焼き上がった後の作品の変化に、子どもも大人も、全員が目を輝かせていました。
「これ私の作品!」「これは誰さんのじゃない?」と隣の人の作品を見たり、お互いの作品を見せ合うことで、お互いの努力や工夫を共有し合う時間も。3日間の過程が、この瞬間に詰まっていました。
まとめ
陶芸と言えば、多くの人が作品制作をイメージするかもしれません 。ですが今回の野焼きのワークショップは、他者との繋がりを感じる貴重な時間になりました。
窯づくりの基本から始め、ねっとりとした粘土を感じながらの窯形成。待ちに待った焼き上げ。横にいる人と会話をしながら、何度も手を動かし、土を重ね、形を整える。お互いの作品を見ながら、アドバイスを交換したり、称賛の言葉を贈り合う。
年齢や経験に関係なく、みんなが同じ土台の上で作品を作っていく過程は、このワークショップならではの魅力でした。
(文:横内真世)