北アルプス国際芸術祭2024を障がいのある方と巡るモニターツアーレポート
去る2024年9月23日(月・祝)、信州アーツカウンシルとザワメキサポートセンターでは、ザワメキアート展、ザワメキ・キャラバンin大町(2024年10月12日-11月4日)、北アルプス国際芸術祭2024(2024年9月13日-11月4日)をあわせて楽しんでいただきたい!という想いから、障がいのある方たちと芸術祭を巡るモニターツアーを行いました。
一緒に巡ったからこそ見えてきたものや、芸術祭は障がいの有無に関係なく参加者やサポートスタッフ全員で心から楽しめる時間になったことなど、この様子をしっかりとまとめ今後につなげていきたいと思います。
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ダイジェスト動画
準備編
各アートサイトのリサーチ
モニターツアーを行うにあたり、まずは実際の状況を知ることが必要!ということで、全ての作品を鑑賞。段差の有無や入口の広さ、通路の状態、また駐車場から作品までの距離などの環境面をはじめ、展示場所の暗さや音の有無などの作品に関する要素もチェックしました。
施設へのヒアリング
障がいのある方と一緒に芸術祭を楽しむ為に必要な配慮について、信州アーツカウンシルと関わりがあって福祉の現場でサポートをしている方に改めてお話をうかがいました。まず挙がってきたのは鑑賞料金について。障がいのある方は1,000円ですが、介助者は一般料金3,000円(前売2,500円)になり、介助者による支援がなければ鑑賞が難しい方にとって金額的にハードルを感じるそうです。また、計画時必要なものとして作品の内容がわかるマップ、多目的トイレの場所、近隣の緊急搬送病院の情報で、鑑賞中はわかりやすいサイン(大きな音・強い光の警告も含む)があると良く、体験型で楽しめる作品は鑑賞意欲が高まるということでした。ただ、困っていたら手を貸して、あとはそっとしてもらえるような “心のバリアフリー”が周囲にあることが一番で、バリアのある場所でも行きやすくなるということでした。
どんな人に参加してもらう?
様々な“障がい”があるなかで、対象者を予め決めないと受け入れ準備もできないのではないかと最初考えました。しかし障がいの種類で人を分けて、特定の障がいを優先することになることにも、気が進みませんでした。アート作品や設置環境も様々で、開幕しないと状況もわからないのに、何の想定で準備するのか、先入観にとらわれるという懸念もありました。 結局、今回を「継続する活動の初回」と捉えて、既に接点のあった関心のありそうな方にお声掛けし、「行きたい!」と意思表明をしてくださったご家族と障がいのある方を念頭に、日々の経験で蓄積した対応力を現場に持ち込んで活かしていただく、ということを大事にしました。例えば今回は視聴覚の障がいのある方の参加を受け入れることはできなかったので、また今度、ということで間口を広げていけたらと思います。
どんなルートを巡る?
北アルプス国際芸術祭ならではの、自然と関わりがある、感覚的に豊かな、ひと目見て興味ひかれる作品を織りまぜつつ、とりあえずみんなで見に行ってみよう!その中で何がバリアなのか、何が必要なのかを運営側も学ぼう!という姿勢で、多様なロケーションを体験できるようなルートを考えました。作品の写真やマップ、ルートを確認しやすいように参加者に配布する「しおり」を作りました。旅のしおり[PDF]
特に配慮したこと
「芸術祭やアート全般を多様な人達にひらく」ということがもちろん大事なのですが、そのためには、障がいのある方やそのご家族に面白い体験として経験してもらえること、また行きたい、繰り返したい楽しい一日になることが必要。計画通りにいかないことを念頭に、各参加者が自分のペースを保てるゆるやかな進行を心がけました。
参加者のみなさん
■ 両角さん家族 ■ 福田さん家族 ■ 町田さん家族 ■ 大井さん家族 ■ 中野さん家族 ■ 渡辺さん家族
■ 長野県立美術館 アートコミュニケータ1期生 3名
鑑賞編
スタート!
北アルプス国際芸術祭 駅前インフォメーションセンターに集合 google map
市街地エリア
2 村上慧<熱の連帯(足湯)> google map
信濃大町駅前の広場に突如として現れた藁葺きの建物。ここは枯れ葉の発酵熱を利用した“足湯”が体験できるところでした。ウッドデッキの下にはものすごい量の枯れ葉が敷かれており、まるで広葉樹林に来たような独特の香りが漂うのも納得です。足をグイッと奥まで入れると発酵による熱で足を温めることができます。枯れ葉に触れてテンションが上がる方もいれば、足に触れる感触が苦手という方もいらっしゃいました。車椅子ユーザーは介助者が2名いれば体験することができました。
3 ムルヤナ<居酒屋MOGUS> Instagram google map
駅から大通りに出てすぐ右に曲がり、住宅街に入る。しばらく歩くと見えてくる青い屋根とその壁面に飾られた大きなお面。そこが、インドネシアのアーティスト・ムルヤナのアートサイト「居酒屋MOGUS」です。ツアー一行で訪れると、「ようこそ」となんと作家ご本人が登場!偶然にも、ムルヤナさんが滞在されてワークショップが開催されていました。室内にたくさん用意された毛糸で編まれたフードのモチーフを自由に選んで自らの「フードモンスター」を創り、ムルヤナさんがそれを写真に撮ってくださるというスペシャルな瞬間に、参加者のみなさん大盛り上がりでした。
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本来初めての場所は苦手なんですが、事前にしおりで見て部屋の中に何があるかわかっていた(大好きな感じでした!)ので、外で並んで待つことも、中に入ることも、すんなりでした! -
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5 ポウラ・ニチョ・クメズ <自然の美しさと調和> google map
このサイトの特徴は、趣きのある店舗に大作が展示されている事ですが、障がいの特性によっては、沢山配置されている本棚が苦手に感じるかもしれないとの意見や、車椅子ユーザーは、鑑賞できるポイントが限られ、作品を見上げるかたちとなるので、作品を細部まで鑑賞できない場合があります。
6 淺井裕介 <すべては美しく繋がり還る> google map
大町名店街は、昭和の風情が残るノスタルジックなアーケード街。天井から程よく陽の光が入り、青い電灯や看板が幻想的な空間です。見下ろすと地面には、淺井裕介の作品があります。参加者は、各々のペースでこの空間を楽しんでいました。 大町名店街を本通りから東町駐車場に向かったのですが、名店街を抜けて駐車場へ向かう道に高低差があり坂道のため、車椅子ユーザーは、介助が必要な場合があります。
東山エリア
32 ヨウ・ウェンフー <竹の波> google map
今回の芸術祭の象徴的な作品の一つ。信濃大町駅から約8㎞、車で15分位かかるので、時間に余裕を持って鑑賞に向かうことをお勧めします。この会場の駐車場は、案内板の出ている「大町市役所八坂支所(上の駐車場)」と、「大町市八坂公民館(下の駐車場)」の2ヶ所から選べます。 「上の駐車場」からは作品の全景を眺めることができますが、建物まで50mほどの坂道があるため、体力に自信のない方は「上の駐車場」で鑑賞したのち、「下の駐車場」に移動するといいかもしれません。会場の公民館にはキレイなトイレ(車椅子対応)もあるので安心です。
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芸術祭のマップに、多目的トイレの 表示がほしい。
仁科三湖エリア <木崎湖>
21 ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット <ささやきは嵐の目のなかに> google map
駐車場から木崎湖を右手に見ながら湖畔沿いを少し歩き、森に上がると見えてくるキラキラと光る無数のレンズ。風に揺れながら、向こうの景色を映し出しています。そこまでお散歩気分で歩いていたみなさんも、「わあーきれい!」と歓声を上げて駆け足に。光のインスタレーションを創っているのは、なんと15,000枚の度数つきの眼鏡のレンズ。なるほど、だから向こうの景色が拡大して見えるんだね、なんて言いながらみんなで覗いたり、反対から写真を撮ったりしながら作品の中に入り込み、長めの時間を過ごしました。
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自然の中、しかも大好きな水の近くにあったことでお散歩気分で歩けて、その中に作品があったので「なんかあるぞー、不思議!」とすんなり入っていけました。
20 木村崇人 <水をあそぶ「光の劇場」> google map
木崎湖沿いにある空き家をまるごと使ったこの作品。木崎湖が一望できる2階の部屋は、流木のベンチに座りながら部屋全体で木崎湖を感じることができます。2階に上がる階段は傾斜が急なため、上り下りする際は気を付ける必要がありそうです。1階は湖側に開けたテラスと繋がっており、参加者の皆さんはテラスに腰掛けたり、備え付けのクッションに寝転がったりしながら、木崎湖と作品を満喫していました。
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案内に「ここまで徒歩〇〇分」などの 表示があると、わかりやすい。
仁科三湖エリア <中綱湖>
26 蠣崎誓 <種の民話 ーたねのみんわー> google map
六角形の平面に描かれた山や木・模様などの絵は、近くで見ると大町近辺から集められたさまざまな“種”で描かれていました。大豆やあずき、花豆など見覚えのあるものも!横の棚にはビン詰めで使われた種の名前と採取された場所が書かれていました。
25 コタケマン <やまのえまつり> google map
体育館に入ると、空間いっぱいに吊り下げられた大きな布に描かれた絵が目に飛び込んできます。大きさに圧倒されつつ「これどうやって描いたんだろう」「布の継ぎ目がある」など、作品の細部を観察している声も聞こえました。体育館奥にあった制作風景の映像をベンチに座りじっくり見ていたり、ステージで横になったりと、各々がゆったりと休みつつ好きな場所から作品を楽しみました。
参加者からの感想<抜粋>
参加者の感想①(クリックすると詳細が開きます)
モニターツアーに参加させていただき、ありがとうございました!
息子いわく
*作品を実際に作れる体験(WS)があったのが良かった。(ムルヤナさんですね)
*ゆる〜い感じのツアーだったので、参加しやすかった。
*あまり緊張せずに、いろいろな人と話をすることができて良かった。
とのことでした!
家族としても、当初は息子たちがどう反応して行動するか…かなり未知数でした。息子たちは障がい特性上、新しい場所に馴染むのが苦手で自分の世界にこもってしまいます。大好きな漫画の世界を持ってきて「安全地帯」を作ったり、大好きな歌を歌い続け「自己世界の保持」をする。
この2人がどう変わるか…見守りました。するとどうでしょう。当初はただツアーに着いてきましたの息子たちが、作品に対して積極的に体感しよう、これは何だろうとどんどん芸術祭の世界に入っていきました!
次男はコタケマンの制作に魅入られ、長男は水をあそぶ「光の劇場」をまるごと体感していました。
2人のどこか解放された姿に、親として一番驚きました。
この過程は何だろう…と考えるとツアー全体にあった「寄り添い、包み込む姿勢」だったかなと気づきました。
息子たちは学生ですので、主な活動拠点は「学校」です。学校での生活や活動は、当たり前ですが規律や制限が入り、個人の事情や状態は二の次になりがちです。これは学校という「社会」を運営するには必要なことなのですが…こればかりだと、息子たちのような特性を持った人間にはきつい状況が積み重なり、やがてその「社会」に対してマイナスな感情しか湧かなくなります(汗)
家庭に帰り、そのマイナスになった部分を埋めたくても家庭でも限界がある中、今回のツアーのような「体験」が助けてくれたと思います。芸術祭での鑑賞だけでなく、このツアーの中で出会った人たちとの交流も息子たちに大きな影響を与えたと思います。
学校でも家庭でもない「サードプレイス」だったと感じています。
もちろん美術館などの文化施設もその役割があると思いますが、夫が感想でも言っていたとおり、施設は時にハードルが高くなることがあります。
その点、今回のツアーはありのままの息子たちが軽やかな気持ちで参加できたことは、とても大きいと感じます。
以上長くなりましたが、親の私自身はただただ作品鑑賞と、大町の街と自然、参加した皆さんとの交流を思いっきり楽しませていただきました!
本当にありがとうございました。
参加者の感想②(クリックすると詳細が開きます)
先日はありがとうございました。
終了時にお話をしました通り、一人の参加者として充実した時間を過ごすことができました。あらためて御礼申し上げます。
ご企画いただくツアーの趣旨と照らして振り返りますと、芸術祭そのものの持ち味や特徴を活かし、「肯定感」の強い場を作っていただいたことが充実した時間に結実したように感じます。
一緒にサイトを回っていた同じチームの子供たちは冒頭は漫画の話をして、どこか「自分達の空間」を保持していたように見えました。徐々にその空間が拡張していき、後半のコタケマンの作品の場面では製作過程の動画をしっかり見ていたのが印象的でした。
子供の立場では、「知らない場所」に連れて行かれると「不安」だったり、「その場所のルール」に敏感に反応するのかもしれません。
今回のツアーでは上記のような不安要素がなく、そのことが参加者の感受性を触発していったのではないかと思います。
混雑した場面も少なく、そうしたところも参加者側としては「安心」して過ごすことができたのだと思います。
時折、混雑した鑑賞空間(美術館)だと朝の通勤電車のように肩がふれあうような距離感になることもありますが、今回セレクトいただくコースはそうした不安がなく参加者同士の精神的なゆとりにもつながったように感じます。
芸術祭の要素や参加者の特性を組み合わせて、事前に場・空間を設計(デザイン)していただいたおかげです。
野外空間を含めた豊かなアート体験が、(行程主体ではなく)参加者主体のゆっくりとしたツアーとも適合していたように感じます。
(ゆっくりしすぎてしまいお昼時間はお待たせしてしまいすみませんでした。)
特に鑑賞サポートをしたわけでもなく、正直一般参加者と同質の感想になってしまいますが、以上です。
ありがとうございました。
参加者の感想③(クリックすると詳細が開きます)
モニターツアーに参加させていただきありがとうございました。
あわただしい日常を忘れゆったりとした気持ちで楽しい一日を過ごすことができました。
今回のツアーを楽しめたのは
優しい人が周りにたくさんいてくれたからかなーと息子は話していました。
無理のないスケジュールとその場で気軽に相談できる方がたくさんいてくださる安心感とでより深く鑑賞にひたり、ツアーだからこそ楽しめる新たな発見や体験ができたこと嬉しく思います。
初めて行く場所は「楽しい計画」と「不安を解消するための計画」さらに団体行動ともなるとあれこれ考えているうちに不安がふくらみすぎてハードルがとても高いのですが、使いやすいトイレはここに、ゆっくり休めるとこはここ!など小さな不安が解消できる情報ツールやわかりやすい目印(サイン計画)など、気軽に相談できる場所や人がいてくれると安心かなと思いました。
今回は、企画をしてくれたスタッフのみなさんも参加者も一緒に楽しい時間を過ごせたことがとても良かったなと感じました。息子もみなさんとの活動を通じて家族や友達以外にも自分の気持ちに寄り添って、一緒に楽しんでくれる人たちがいるんだと感じられたと思います。
みなさんとアートを通じて「ただただ楽しい」を共有できたこと、とても嬉しく思います。
アートを通じた優しさの輪がいろいろな形で多くの人に広がるといいなと思いました。
ありがとうございました!
参加者の感想④(クリックすると詳細が開きます)
モニターツアーに参加させていただきありがとうございました。
スタッフの皆さんの心地よい距離感とツアー内容が無理ない日程を考えていただき、とても楽しい1日を過ごす事ができました。
お天気も気候も良く、最後には虹まで見られたステキな1日でした。
ツアーの感想
・小さなチームに分かれていたので、途中で抜けたりがとてもしやすく、
一日中参加が無理でも気兼ねなく参加できると思いました。
・チームごと車で移動する際、
何台かで連なって行く場合どの車についていけばいいのか少し不安になりました。
ツアーの旗のような目印を先導の車につけるとわかりやすいのでは。
目立つ色のマグネットシートなどを車につけてもらえばいいのではないかと思いました。
・しおりを作っていただいたので予定の時間や行動の見通しがつくので、あると大変ありがたかったです。
・お昼は外食もいいですがバタバタする可能性大だと思いました。
(外食後、集合時間ギリギリで私は小走りしました。)
・大町を歩いてみて、大町が山の気候なのを実感しました。
(天気が変わりやすい、気温も長野市などより低い、湖の周りの風の強さなど)
これからどんどん寒くなるので、参加する時はしっかり寒さ対策必要ですね。
大町の駅前も郊外も歩くと、すぐに自然がありとても心地良く、気分良く過ごせました。
と色々書かせていただきましたが、世代、障がいを超えて皆さんとご一緒させていただきましたが、ただただ楽しい1日を過ごせました!の一言につきました。
ありがとうございました♪
参加者の感想⑤(クリックすると詳細が開きます)
モニターツアーに参加させていただき、ありがとうございました。
感想は「楽しかった!」の一言に尽きるのですが、感想シェアタイムにお話ししたようなことと、その後考えたことをいくつかLINEにて共有いたします。
・全体的にゆったりとした行程で計画されていて、それぞれの参加者が安心できる人たちと一緒に、タイムスケジュールを忘れてしまうほど(すみません💦)マイペースで鑑賞を楽しめる、ゆるーい雰囲気がとても心地良かったです。
・午前の市街地エリアでは、ムルヤナさんの作品でのフードモンスター作りが楽しかったです。
幼児から大人まで誰でもできる敷居の低さと、ポップでカラフルな色合いが素敵でした。
・東山エリアから、午後の仁科三湖エリアは、大町の自然を感じながら、その一部となった作品を味わう解放的な時間でした。
・帰宅してから今日まで、シェアタイムで皆さんがお話していたことを思い返しているうちに、前に読んだ『目の見えない白鳥さんとアートを見に行く』の最後の部分を思い出しました。
著者の川内有緒さんが、何故白鳥さんたちと作品を見続けて来たのか考えてみると、結局は、「この世界で、笑いたい」「そこにいるひとたちと…いたい」ということに集約される、という一節(320ページ)です。
日常から切り離されて、色々な人がゆるやかでフラットな関係性の中で一緒にいる、そのような場を作り出すアートの力を感じた一日でした。
参加者の感想⑥(クリックすると詳細が開きます)
昼前後に多少の雨風に見舞われましたが、概ね天気に恵まれ、秋風が心地よい大町エリアのアート散策。日常から離れた出会いと体験の一日でした。
28歳の知的障がいの次男にとっては、父に連れてこられた感もあり、感情が動くシチュエーション(※ツボにはまる)は、ほとんどありませんでしたが、いろいろな人といっしょに歩き回った1日は、彼なりに有意義な一日だったようです。(家の中で過ごす1日に比べると数倍の充実感だったと思います。ただ、聞いても「べつに」となりますが)
※障がいをもった彼等の多くは、アートにしろ音楽にしろ、人によってはアニメ、本、アイドルなど、何かしら「ツボにはまる」ものやときがあるケースが多いものです。ツボにはまったアートの前では、ときとして「楽しくてしょうがない感」炸裂になったりですね。普段は感動表現の無い次男でさえ、ツボにはまったときは、歌い、踊り、はじけます。
障がいの内容によるのでしょうが、いろいろなところに行って、いろいろな体験をすることが、「今ここに生きている価値や充実感」に繋がると思います。それは、「これがよかった」が無くても、感情表現が無くてもあるはずです。
今回のイベントのように、障がい者とその家族のことを理解しようとするアーツカウンシル、国際芸術祭の皆さんやザワメキサポートセンターの皆さんのようにすでに理解している方が、「つなぎ役」をしていただけることで、とてもバランスがいい、居心地のいいイベントになったと思います。
参加された皆さんが話される「敷居の低さが心地いい」は、そんなスタッフの皆さんのおかげです。それに、「私たち家族の方が子どもたちより楽しめました」の声がでることこそ、親が楽しむ姿を見る子どもたちも含め充実したイベントの証だと思います。
芸術祭のインクルージョン的な敷居の低さについては、このイベントを体験した限りでは満足しています。もちろん、親御さんからの感想に聞かれる、精神的・身体的なバリアフリーについては、当事者の意見を反映したり、アンケートなどをいただいたりしながら配慮、改善する余地はたくさんあるとは思います。ただ、参加できない作品や鑑賞に課題がある作品も混在することで、どなたかもおっしゃっていた、合理的配慮をみんなで考える機会になればいいかなと思います。
居心地の良さは、「こうでなくてはいけない」ではなく、「それでもいいよね」から生まれるはずです。参加者みんなに楽しんでもらいたいけど「ぜったい」でなくてもいいよね。そんな、ゆるやかで肩に力が入らない今回のようなイベントが、増えていくことを願います。
障がい者とその家族にとって「寛容」が何よりですから。
今回のイベント開催ありがとうございました。
参加者の感想⑦(クリックすると詳細が開きます)
ゆる〜い団体行動が、心強くありがたく心地よかったです✨!
娘共々楽しい時間を過ごさせていただきました😊!
遠方ということもあり、前泊して前日も別のアートサイトも回れたら…と思っていたのですが、北アルプス国際芸術祭のHPにはマップがなく(見つけられず?)街中のアートサイトの位置関係もあまりよく分からずで、、結局前日は雨でしたので夕方入りしました。
モニターツアー当日にしおりをいただいて、各エリアのマップや作品の様子も分かり、とてもありがたかったです!
車椅子で回ると何かと時間を要するので、「モデルコースとだいたいの所要時間」などが目安で分かると、回りやすいかな〜と思いました。
会期中にまた訪れたいと思います😊❣️
参加者の感想⑧(クリックすると詳細が開きます)
子どもは、発達障害で集団の中にいると気を遣って疲れる、拾わなくてもいい様々な刺激をも拾うので余計に疲れる、外出が基本的に苦手という特性があるので、健常者以上に疲弊します。
なので、出かけた翌日がお休みで身体を1日かけて、ゆっくり休められるように…という意味で、土曜日に出かけて日曜日は休息するようにします。
今回のモニターツアーは祝日の参加で翌日は平日だったので、予想通り、体力回復に時間がかかり本日午前中の学校は欠席しました💦
それでも高等部で単位の関係などがあるため、午後から頑張って登校しました。
もし、次回またモニターツアーの開催があるようでしたら、翌日が休日になるような日に設定していただけると、より参加しやすいな…と感じました。
うちの子だけでなく、発達障害を持った方は繊細で音や光刺激に敏感だったりして想像以上に疲れます。
身障者の方やご家族の方も、参加の日に向けて体調を整えることに気を遣い参加したことで疲れると思います。
参加後のケアを考えると、翌日がお休みであって欲しい……
と、個人的に思いました。
参加者の感想⑨(クリックすると詳細が開きます)
私はこのツアーで1番安心したのが、
担当の方に無理ならば途中で帰っても良いからね、と言っていただいたことでした。
まだ小学低学年ということもあったり最近落ち着かないこともあり、行きたいけれど迷惑をかけてしまうから、もしかしたら最初から無理ではないか、行けてもずっとは難しいかも、という頭があったので、ハードルがかなり下がって決意できました。
行ってからは、車から降りるかどうか問題がありましたが、最初の街中では降りてくれ、散歩もキョロキョロ楽しみ、やると思わなかった足湯、そして明らかに好みのムルヤナさんのところと順調でした。
ムルヤナさんの団子を抜いてしまったのは本当に申し訳なく思いましたが 本人的には後で絵を描いてしまうくらい刺激的な場所でした。
所々食堂など好きな食べ物屋さんも気にしながら歩けたのがまた楽しかったかもしれません。
初めてのところが苦手なので入れない、車から降りれない、前に進めないなどご迷惑をおかけしましたが、それでも優しく担当の方が一緒に絵を描いてくれたり、ここに行くよと示してくれたり、好きなペンが入ったバッグをもらったりと、嬉しいことを沢山してくれたので、参加することができました
ツアーで周りを気にしなければならないのですが、担当の方が全て誘導してくれ、そこまで遅れることなく行けたこと、歩けないかもしれないと想定して駐車場を案内してくれたこと。帰る時もここなら寄って行けるかもと提案してくれたこと 本当に嬉しかったです。ただ、皆さんのように周りの方を見る余裕がなく、感想が言えないのが申し訳なく思ってます。
お昼に関しては、我が家は自由に好きなものを食べることができたのでよかったです。
決まっていたら無理だったと思います。
昼食後は自然の中に(大好きな水のそばであったことも大きいですが)あったことで小学生の娘にとってお散歩の中に芸術がある、なんかあるぞ〜!不思議〜!とすんなり受け入れられたのかなと思います
娘の感想は聞けませんので あの絵と表情で私が勝手に推測してるので、、あっていれば良いなと思ってます♪
編集後記
■ 今回障がい者の方とツアーをしてみて、実は芸術祭は、ふだん障がい者と関わりのない人たちが、障がい者の方と一緒に、フラットに時間を過ごす良いツールになるというのが気づきです。作品鑑賞に加えて市街や湖畔の遊歩、飲食の時間があることで、日常生活の関係性に近い交流機会を作れると思いました。ツアーというかたちで互いに異なる多様な人たちが、アート作品に反応しあうことで、一層、アートの魅力やアーティストが人を惹きつける力を実感することになります。引き続きこのような取組を続けていきたいと思いますし、これに続く人たちが現れることを期待しています。(信州アーツカウンシル 野村政之)
■ 「障がいのある方」と普段から関わっている当センターとしては、事前に「障害特性」とか、「鑑賞支援」、「合理的配慮」等について意見交換をしたうえで参加しました。しかしながらツアーが始まった瞬間、すべてが取りこし苦労であったと気付かされました。もちろん、必要最小限の配慮は必要となりますが、「障がい」をフィーチャーするのではなく、大町市の街並みや自然を含め、「作品鑑賞を一緒に楽しむ」という気持ちさえあれば、普段、障がいのある方と関わりがない方であっても、「北アルプス国際芸術祭」、そして「ザワメキアート展」、「ザワメキ・キャラバンin大町」を楽しめると思います。是非、色々な場所に出かけてみてください!(ザワメキサポートセンター 中村勘二)
■ アーツカウンシルさんの発案で始まり、知り合いのご家族のご協力をいただいて実現した鑑賞ツアー。スタートから予想以上のことが起きたり、心配していたことは何ともなかったりと、その都度みんなで「へえ」と驚いたり、感心したり、笑ったりと、一緒に歩いたからこそ見えた光景がたくさんありました。中でも一番強く感じたのは、「好き」という気持ちで超えられるバリアがたくさんある、ということです。入ってみたい!と段差を超えた車いすの女の子。作品を見たい!と暗くて人が多い(本来苦手な)部屋に入れた女の子。これもアートの魅力なんだ、とあらためて感じています。美術館などでの鑑賞とはひと味違う、街なかや大自然の中でのアート鑑賞をぜひ、たくさんの方に楽しんでいただけたらと思います。(鈴木真知子)
開催概要
■ 開催日時|令和6(2024)年9月23日(月・祝)9:30-16:30
■ 参加者数|6家族(うち障がいがある方 7名)ほか 計20名
■ 行 程|
9:30〜10:00:受付@信濃大町駅前インフォメーション
10:00〜11:00頃:市街地エリア
【2】村上慧
【3】ムルヤナ
【5】ポウラ・ニチョ・クメズ
【6】淺井裕介
11:20〜11:40頃:東山エリア
【32】ヨウ・ウェンフー
12:00頃〜13:30:昼食タイム(基本的には自由行動。)
※スタッフは車を大町市営東町駐車場に停めて大町市総合福祉センターでお弁当を食べる。
参加者も総合福祉センターで昼食をとれる。(別の場所に行ってもよい)
午前のみで抜ける方有り、午後から参加の方もいるかもしれない
13:30〜16:00頃:仁科三湖エリア
大町市営東町駐車場から出発
◎木崎湖
【21】ケイトリン・RC・ブラウン&ウェイン・ギャレット
【20】木村崇人
◎中綱湖
【25】コタケマン
【26】蠣崎誓
16:00頃〜16:30頃:時間と体力がある参加者の方と感想シェアタイム
16:30頃:解散
■ 企 画|
信州アーツカウンシル(一般財団法人長野県文化振興事業団アーツカウンシル推進局)野村政之、佐久間圭子、早川綾音
ザワメキサポートセンター(社会福祉法人長野県社会福祉事業団 長野県障がい者芸術文化活動支援センター)中村勘二、持田めぐみ
ザワメキ・キャラバンin大町 キュレーター 鈴木真知子
■ 協 力|北アルプス国際芸術祭実行委員会事務局