11/2-3 パレードin上田 「ケアのクリエイティビティ」レポート
去る11/2(土)-3(日)、「信州アーツカウンシル2024パレード」も折り返しとなる第3弾は<ケアのクリエイティビティ>に焦点をあて、東信エリアを中心に信州アーツカウンシルで支援する文化芸術とケアの視点を織りあわせて創造的な活動を行っている県内の団体紹介を行いました。
ここではその様子をレポートいたします。
photo by Marehito Antoku
展示
1.アトリエももも[茅野市]
障がいの有無・年齢・属性関係なくごちゃまぜになって表現を楽しむためのアトリエとして茅野市の「荒神の古民家」を拠点に活動しています。今回はちゃぶ台と座布団、制作された作品やたくさんの画材が空間を囲み、実際のアトリエももものような和やかな雰囲気が終始ただよっていました。
2.NPO法人WHITE CANVAS[安曇野市]
安曇野市にある福祉とものづくりのアトリエ「TIME WARP」では、利用者が制作した淡い水彩の絵や刺繍作品が並びました。地域にアトリエを開く取組として講師の絵本作家斎藤槙さんによる土絵の具ワークショップで利用者・一般参加者・国際ボランティアの方と制作した「雷鳥」の絵が目を惹きました。
3.さくほミングル[佐久穂町]
佐久穂町の放課後等デイサービス施設に通う子どもたちを中心に、ダンスと音によるワークショップを実施しています。講師の砂連尾理さんをはじめとしたワークショップに携わる人々の声やワークショップ中の写真など、「さくほミングル」によって育まれてきたものを感じることができる展示でした。
4.NPO法人アイダオ[上田市]
学校に行きづらい日を映画館で過ごせる「うえだ子どもシネマクラブ」では、昨年度よりその日みた映画に関連した切り口でさまざまなワークショップを行ってきました。展示ではこれまで上映してきた映画のチラシやここを居場所として過ごす子どもたちが映画を観て感じたことを表現した水彩作品やペイントした石も!
5.NPO法人リベルテ[上田市]
リベルテが2021年度から実施している「路地の開き」プロジェクトで使用した小道具やリベルテのメンバーが作ったオブジェなどを展示。2023年度の街歩きで使ったや、2024年度の防災・避難練習の際に用いたラジオ放送の様子など、目でも楽しい、耳でも楽しい賑やかな展示となりました。
6.医療法人社団オレンジ[軽井沢町]
障がいや医療的ケアとともに生きる方を含めた多様な市民とアーティストが一緒にソーシャルサーカスの創作上演を行い、企画段階から地域の医療福祉分野の専門家等と協働すること、互いのノウハウの共有や認識の向上を目指す取り組み「つながるサーカスキャラバン」の写真をたくさん展示しました。
7.NPO法人ながのアートミーティング[長野市/小諸市]
「こもろのおうち」では、月に1日、生きづらさを感じているこどもたちや障がいのあるこどもたちを主な対象としたワークショップが開催されています。講師として参加した各分野のプロの紹介や、ワークショップごとに発行される「こもろのおうち通信」が展示され、今までの活動の記憶がずらりと並びました。
8.むらびとアートプロジェクト[宮田村]
宮田宿のフリースペースを拠点に障がいの有無を問わないバリアフリーな地域活性化活動を実践しています。映像では地元ミュージシャンによるオープンマイクや宮田宿を写すフォトコンテスト、竹を使った楽器制作ワークショップなどの紹介があったほか、地元アーティスト青木星斗さんのアート作品展示で会場を彩りました。
9.一般社団法人シアター&アーツうえだ[上田市]
寄付された食材でその日集まった人たちと一緒に料理を食べる「むすびの日」など、これまで実施してきた様々な取り組みの写真やポスターに加え、雨風しのげる宿「やどかりハウス」の利用者の方とお話しもできる「舞台」が展示されていました。
10.まるっとみんなで準備室[軽井沢町]
様々な工夫や鑑賞サポートによって、障がいの有無から年齢、国籍を問わず、軽井沢町に住む様々な人が集い、映画を楽しみながら交流できる「まるっとみんなで映画祭」の内容や、映画祭のこれまでの歩みについて展示しました。展示は風船に囲まれ、楽しそうな雰囲気!
11.わかち座[小諸市]
これまでの活動内容に加え、振付家・ダンサーの鈴木ユキオさんを招き、ワークショップやショーイングを行う「BBGセッション」の過程で生まれた印象的な言葉を展示しました。ダンスの写真あり、ブルーベリーの絵もありと、農業と表現の場を両立・共存させているわかち座らしい展示になりました。
12.ザワメキサポートセンター
大町市で開催されていた「ザワメキアート展2024 ネイチャーインアウト」展の展示作品を一部紹介!同じ時期にこれまた大町市で開催されていた「北アルプス国際芸術祭2024」のコンセプトに合わせ、「水・木・土・空」の4つをテーマにした作品群が並びました。
13.信州アーツカウンシル
これまでの主催事業やパレードの振り返りができるパネル展示や、9月にザワメキサポートセンターとの協働で行った北アルプス国際芸術祭を障がいのある方と巡るモニターツアーレポートを紹介しました。また、畳とちゃぶ台でホッと一息つける「なごみ処」では信州アーツカウンシルはんこでオリジナルカードづくりも!
-
リベルテ×信州アーツカウンシルコラボリベT -
これまでのパレードの様子を写真展示 -
パレードプレスも展示 -
信州アーツカウンシル×ザワメキサポートセンター 北アルプス国際芸術祭を障がいのある方と巡るモニターツアー -
はんこで作るオリジナルカード作りもできるなごみ処
体験スペース「つながるサーカスワークショップ エアリアル&ジャグリング体験館」
サーカスアーティストの金井ケイスケさんと、ケアの文化拠点・ほっちのロッヂは、協働でソーシャルサーカスのプロジェクトを行っています。今回は、サーカスのエアリアルとジャグリングを体験できるスペースが登場!エアリアルで使われる月形のフープや、ジャグリングのピンやボール、ディアボロと呼ばれるコマ、皿回しの道具などが並びました。年齢を問わず終始にぎやかな様子でした。そして2回行われた小パフォーマンスでは、エアリアルの圧巻のショーと、オーディションで選ばれた市民キャストたちも見事なパフォーマンスを披露しました。
わかち座+鈴木ユキオプロジェクト「風景とともに」
ダンサーは年齢、障がいの有無、国籍、ダンス経験いずれも問わず公募され、全国からたくさん集まりました。パフォーマンスは、展示が並ぶ多目的ルームからスタート。突然始まったダンスに、居合わせた人たちが観客になり、導かれるようにプロムナードへ。観客も一緒に、大スタジオへ集団で移動しました。途中でゆっくり歩いたり、少し立ち止まったり、手を上にかざしたり、外の風景も感じながら。大スタジオでは、金井ケイスケさんやサーカスの出演者も巻き込み、音楽に合わせて踊りました。思わずダンスの輪に入っていく観客も!一人ひとり違いはあれど、1つのパフォーマンスを作り上げた参加者を温かい拍手が包みました。
「路地の開き〜リベルテと世界を結ぶまち歩き〜」
あいにくの雨天のため、当初予定していたリベルテメンバーと巡る街歩きは中止となり、代わりにリベルテが運営する食堂「ton-屯-」にて、代表の武捨和貴さんから、2021年度から継続的に実施している「路地の開き」プロジェクトについてお話をお伺いしました。2021年度のアトリエでの庭作りから始まり、2022年度のちんどんパレード、2023年度の街歩き、そして本年度実施した防災・避難練習まで、リベルテがアートを通してどのように障がい福祉を地域に開き、関係を紡いできたのかをお聞きしました。お話のあとは、メンバーがつくったお昼を参加者全員でいただきました。この日のメニューは具がたっぷり入った中華丼。五感を通してリベルテを“体験”できたプログラムとなりました。
オープンカウンシルvol.3 「アーツ&ケアのオープンマイク!」
夜は海野町商店街にある民間文化施設・犀の角に会場を移して、地域の文化芸術活動や支援・ケアの活動をしている皆さんと交流する時間になりました。夕食は犀の角で毎月恒例となっている食事会「のきした むすびの日」のようなかたちで、寄付された食材を使って、その日たまたま集まったみなさんで料理をして、食べました。温かい食事と楽しい会話の空気が会場を満たすなか、犀の角の荒井さん、NPO法人WHITE CANVASの石岡さんや信州アーツカウンシルスタッフが、想いや自己紹介を中心にラジオ感覚でマイクを繋げ、後半には多くの参加者の皆様がそれぞれの話題で盛り上がっていました。“ケア”をキーワードに信州アーツカウンシルの主催・助成事業等で関わりのある人や団体が集結する機会となり展示やギャラリートークに加えて深く知り合う時間となりました。
映画『へんしんっ!』上映&トークセッション
『へんしんっ!』は、電動車椅子に乗った石田智哉監督が障がい者の表現活動の可能性を探り、取材を重ねて制作されたドキュメンタリー映画です。会場は、100年余の歴史を誇る上田映劇。上田映劇では、上映作品の一場面を描いた「映劇はんこ」を映劇手帳に押すのが恒例のお楽しみですが、今回は『へんしんっ!』のはんこを受付時にドネーションしてくださった方、手帳を持参した方に押印しました。映画には、日本語字幕や音声ガイドが付されており、聴覚や視覚に障がいがあっても楽しめるものでした。上映会の後は、NPO法人アイダオの直井恵さん、信州アーツカウンシルの野村政之ゼネラルコーディネーターの司会の下、さくほミングルの大村麻弥さん、まるっとみんなで準備室の中村茜さんに登壇いただき、トークセッションへ。まずは各々の活動やそこに至る経緯から始まり、ケア、アート、地域という3つをキーワードに話が進みました。映画は最後、ひとり一人障がいの有無や種類に関係なく、互いの身体を接触させながら即興でダンスを踊るシーンで終わりますが、障がいがある人が様々な人たちと協働する場を作ることができるのが文化芸術の強みであるという話や、アートを運営する立場として、障がい者の皆さんと協働することから、行政と協働する時に留意すべき点を学ぶことができるという話が出るなど、ユニバーサルな地域づくりと文化芸術について対話を深めました。