11/16 パレードin南信州<前半>伝統文化とゆたかな暮らしを繋ぐ レポート
次なるパレードは、「民俗芸能の宝庫」と呼ばれる南信州地域へ。「伝統文化とゆたかな暮らしを繋ぐ」というテーマで、11月と1月の前後半に分けてイベントを行っていきます。ここでは、その前半の様子をレポートします!
パレードin南信州前半では、長野×沖縄交流事業「琉球花火復元と清内路の手づくり花火」講座と、「旅する信州アーツカウンシルコワーキングDAY@阿智村」を11月16日に行いました。
旅する信州アーツカウンシルコワーキングDAY@阿智村
コワーキングDAYの会場は、(一社)阿智村全村博物館協会が交流拠点として活用している町屋造りの古民家「つぼや」。昭和初期に建てられ、元々は呉服屋を営んでいたという立派な建物からは深い歴史を感じ、心安らぐ空間でありながらも、しっかりWi-Fi設備が整っており、仕事もはかどります。当日は五平餅作り体験も行われており、体験を終えた子どもたちが信州アーツカウンシルのスタンプコーナーでも遊んでいってくれました。つぼやの2階では信州アーツカウンシルの事業を紹介するミニ展示を展開し、これまでのパレード関連の展示を中心にパネルなどが並びました。
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つぼやの2階は大きな広間になっています -
古民家「つぼや」でコワーキングDAY! -
何色もの色を使い分け、カラフルに仕上げていました。
長野×沖縄交流事業「琉球花火復元と清内路の手づくり花火」講座
そして阿智村中央公民館で、琉球と南信州の花火文化についての講演と座談会を、阿智村、南信州民俗芸能継承推進協議会と共同で開催しました。
かつて琉球王国の首里城の庭で、冊封使と呼ばれる中国からの使者のために精密な仕掛けを駆使して披露されていたと言われている琉球のからくり花火。琉球王国とともに花火の伝統も消えてしまいましたが、残された記録を基に、国立劇場おきなわが5種類のからくり花火を復元しました。
沖縄では鉄粉を用いた近世の花火製造技術が伝承されていないために西洋花火を用いたそうですが、往時の輝きを再現するには鉄粉を用いる日本古来の和火の使用が不可欠でした。そこに、阿智村清内路に伝わる火薬から完全に手づくりする花火が貢献しました。
その歴史は1717年(享保2年)まで遡り、火薬の製造から仕掛け、消費まで全てを自分たちで担うというもので、長野県の無形民俗文化財に指定されています。そこで、10月6日の阿智村上清内路の手づくり花火の打ち上げに合わせて、上清内路煙火同志会が手づくりした噴き出し花火を装填した琉球からくり花火「双龍」が披露され、往時の輝きを蘇らせました。一方は山に囲まれた内陸県、もう一方は海に囲まれた島と、一見縁遠く感じられるかもしれない長野県と沖縄県が、花火を通じてつながった瞬間でした。
講座では、まず琉球花火の復元に携わった国立劇場おきなわ調査研究専門嘱託員・茂木仁史さんに、琉球花火の概要やその特徴を解説いただきました。
そして國學院大學兼任講師・櫻井弘人さんから、南信州における花火文化と清内路の手づくり花火についての講演があった後、琉球花火と清内路の手づくり花火についての座談会に移りました。
座談会では、櫻井さんがコーディネーターを務め、茂木さんに加えて上清内路煙火同志会の櫻井信和さん、下清内路煙火有志会の門野祐一さん、関島煙火製造所社長の関島善純さんにご登壇いただき、コメンテーターには国立劇場おきなわ運営財団理事、國學院大學名誉教授の小川直之さんを迎えました。
琉球花火を担う「火花方」には中国へ留学に行った人もいたようですが、伝統的な中国のからくり花火はからくりを大きくする方向へ発展したのに対し、首里城という敷地の制約があったことから、琉球花火はからくりをより精緻にしていく方へ発展していったそうです。そして、清内路の手づくり花火は天下泰平や平和の象徴で、いかに「花」(=火花)をきれいに見せるかにこだわります。
また南信州地域においては、花火はイベントではなく、日常の一部になっているというお話もありました。それから、それぞれが抱える課題や今後の目標なども語られました。
より当時の姿に近い琉球花火の復元には、清内路の手づくり花火の技術が不可欠で、その復元は琉球史にとっても画期的な出来事と位置づけられるというお話もあり、伝統文化の継承は当地だけでなく、遠く離れた土地の文化や歴史にも資する可能性があるということを認識し、その底力を改めて感じました。
観る側も作る側も楽しいのが魅力で、遊び心を欠かさずに脈々と受け継がれてきたという清内路の手づくり花火。地区の高齢化、過疎化に伴い、資金と人手の不足が大きな課題にはなりますが、これからも末永く続いていってほしいと切に願います。
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長野×沖縄交流事業「琉球花火復元と清内路の手づくり花火」講座 座談会の様子 -
国立劇場おきなわ調査研究専門嘱託員・茂木仁史さん -
國學院大學兼任講師・櫻井弘人さん