現地での身体体験を通して民俗芸能を現代に蘇らせる
音楽家・佐藤公哉率いる Torus Vil. では、これまで青森県、岩手県、新潟県などで現地の郷土芸能や伝承歌を取材し、芸能のなかに伝承されている身体の使い方、太鼓のリズム、発声や節回しなどから新たな音楽や舞台芸術を制作する「MIKUSA PROJECT」の活動を行ってきた。長野県内の芸能に関しても、2021(令和 3)年には県文化芸術活動推進支援事業の補助を受け、伊那市の田楽座から天龍村大河内地区の霜月神楽の舞や太鼓などを学び、そこから着想を得た楽曲を制作した。 今年度は、阿南町和合地区で伝承されている「和合の念仏踊り」(国指定重要無形民俗文化財)を対象とした。7 月、共作するミュージシャン、ダンサーとともに、阿南町和合地区の林松寺での住民のみなさんの稽古に混ぜていただき、太鼓や踊りなどを実際に体験。そして 8 月の本番の見学を経て、新たな楽曲とダンスを創作し、11 月に松本市のヴィオ・パーク劇場で音楽とダンスのライブパフォーマンスを行った。「和合の盆踊り」に参加した体験を踏まえ、オリジナルの輪踊りを創作してワークショップを行った。 「MIKUSA PROJECT / KIMIYA SATO MIKUSA BAND」の活動は本事業の枠にとどまるものではなく、2023(令和 5)年 3 月には東京都と埼玉県でライブを行い、首都圏を中心に多くの音楽関係者、評論家、ダンサーなどを惹きつけた。こうして中山間地の魅力ある伝承文化が開かれ、新たな関心層を得ることに、広い可能性がある。さらに今年(2023 年)は音源としても収録し、リリースする予定だという。南信州でのライブパフォーマンスや、伝承団体との共演といった展開も検討されており、これからも活動から目が離せない。
2022年度の活動内容
• 6〜7月 | 伝承団体の了承を得て、 阿南町「和合の念仏踊り」の取材を行うことに決定 |
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• 7/20・27 | 保存会・地区のみなさんによる「和合の念仏踊り」稽古に参加 |
• 8/15 | 「和合の念仏踊り」本番を見学し、撮影等を行う |
• 8〜10月 | 取材をもとにした楽曲・ダンス創作/取材記録動画を公開 |
• 11/12 | イベント「雲水FES Vol.2-南信州郷土芸能に寄せて-」 会場:ヴィオ・パーク劇場 |
• 2/20 | 記録映像 「MIKUSA PROJECT 2022-WAGO-」Youtube で公開 |
団体・グループについて
Torus Vil.(松本市)
音楽家・佐藤公哉が発足したプロジェクト/ネットワーク組織。
伝統的な文化・芸術のリサーチを行いながら、現代に必要とされる文化のエッジを生み出すことを目指す。
音楽を中心にダンスや美術なども合わせ公演、ワークショプなどの企画・開催を行う。