塩尻AIR主催 「Workshop Terminal」行ってきました

令和4年度助成事業で塩尻アーティスト・イン・レジデンスが主催する「Workshop Terminal vol.1-5」が2023年1-2月にかけて開催されました。
長野県内だけでなく県外や国外から幅広いジャンルの5組のアーティストがスナバや塩尻市内各地でワークショップを行ったのでレポートいたします!

Workshop Terminalとは?
芸術文化に触れる機会の創出を目的とし、表現につながる過程を体験することで、上手になることや評価を目的とするのではなく表現すること自体の大切さを体感してもらうためのワークショップシリーズである「Workshop Terminal」。美術館がない塩尻市でもっともっとアートに触れる機会を生み出していきたい、という塩尻市地域おこし協力隊の蓮沼菜穂子さん岩佐岳仙さんらの想いから、招聘アーティストによるワークショップや市内に制作拠点を生み出していく事業です。
5組のアーティストによるワークショップを保育園・小・中・高校生向けと塩尻AIRが拠点にしている「スナバ」のメンバー向けの2回ずつ開催されました。

VOL.1「キャンバスをつくろう!」講師:蓮沼昌宏さん(アーティスト)

四隅のバランスをみながら木枠を組み立てる

2023年1月8日、塩尻市の小学生を対象「キャンバスをつくろう!」が、塩尻市広丘のえんてらすにて開催。
講師は長野県を拠点に活動をしているアーティストの蓮沼昌宏さん。
絵を描く時に使われているキャンバスの歴史に関するミニ講義のあと、さっそく作業へ!
木枠は木祖村のマルオカ工業株式会社さんで作られている組み立て簡単なものでトンカチで様子をみながらバランスよく叩いていきます。
枠が完成したら次はキャンバス張り。初めて使う工具に四苦八苦しながらも上手に張ることができました。
そしてキャンバスの下地剤を塗って午前の部は終了。
午後からはえんてらすと共催の「キャンバスで絵を描こう!」も開催。
キャンバスに絵を描くのは初めてという小学生ばかり。
「ゆめ」をテーマに、蓮沼先生の描き方を参考にしながら、それぞれ作品づくりに没頭してあっという間に時間が過ぎて行きました。
そして、それぞれの「ゆめ」の作品はえんてらすにて展示されました。

えんてらすに飾られたみんなの「ゆめ」

VOL.2「音楽との出会い~心に響くカンティナーレのメロディ~」講師:吉見伊代さん(チェンバロ、ピアノ)Adrian Dvoracekさん(ヴィオラ)

ビオラの生音を聴き入るこどもたち

2023年1月13日、近自然的環境保育 自然ランド・バンバンにて保育園のこどもと親を対象にした楽器やラテン音楽に触れるワークショップでした。
アーティストはアルゼンチン在住のデュオDolce Sfidaのお二人。
小さなこどもでも楽しめるような手拍子をつかったリズムの感じ方や音楽の楽しみ方を、生の演奏を交えて知ることができる時間となりました。普段は大騒ぎのこどもたちだそうですがとても興味深く聞き入っているのが印象的でした。
また、子育て中で演奏会におもむくことはハードルが高い大人にとっても生演奏の音楽と触れ合える有意義な時間になっていました。

代替企画「絵を描こう!」講師:蓮沼昌宏さん(アーティスト)

80cmの筆をつかって大胆に絵を描く

1月21日にえんぱーくで予定されていた小学生向け「絵具のレシピ」は都合により代替企画「絵を描こう!(講師:蓮沼昌宏さん)」に変更。
集まった小学生は大小さまざまな筆や画材を使ってつぎつぎと絵を描きあげていきました。

VOL.3「絵具のレシピ」講師:加藤巧さん(アーティスト)

みんなで手分けして料理をするようにクレヨンの材料を作る

2023年1月23日はスナバにて「絵具」の歴史を学んだあと砂糖や酢、卵など普段料理につかっている食材を使って絵具やクレヨンを作るワークショップでした。
講師は絵画技法や材料の研究と作品制作をするアーティストの加藤巧さん。
知っているようで実はあまり知らない絵具の歴史。
鉱石や土などから絵具の色となる材料を調達しており、なかにはミイラから採取されていた色もあったとか。
その後は参加者で分担しながらまるで料理を作るように赤・青・黄土色・黄色などの絵具とクレヨンを作りました。
作った絵具と同じ素材からできるという“パン”がお土産!
見てよし作ってよし食べてよし、終始なごやかなリラックスしてなごやかな雰囲気でした。

VOL.4「チンパンジーとピカソにアートを学ぼう!」講師:齋藤亜矢さん(芸術認知科学)

チンパンジーとピカソ?

2023年1月22日は、スナバにて高校生向けワークショップ「チンパンジーとピカソにアートを学ぼう!」がありました。
講師の齋藤亜矢さんは京都芸大教授で芸術する心がなぜ生まれたのか進化や発達の視点で研究をされています。
2歳前半くらいまでは人間もチンパンジーも同レベルの認知力であるものの、人間は2歳後半頃から“見立ての想像”をし、足りないパーツを補完して描くようになってくるそうです。これはパレイドリアと呼ばれ、チンパンジーには起きない現象ということでした。
その後、ピカソが絵を描くドキュメンタリー映像を視聴。「パレイドリア(見立ての想像)」が次々と展開され、あっという間に一つの絵が完成していく過程を見ました。
そして参加者はチンパンジーになりきってネガティブとポジティブを線で表現したあと、人間になって見立ての想像を働かせ絵を描きました。
絵を描くという行為だけでなく、一つの事象を捉えるための見方や角度と次から次へと別のものに作り替えていく柔軟さを学ぶ時間となりました。

VOL.5「名前を踊ろう!」講師:酒井幸菜さん(ダンサー・振付師)

自分の名前をひとりずつ違う動きで踊って披露

2023年1月23日および2月6日の2回にわけて行われた、楢川小中学校7,8年生向けワークショップでは、振付家でダンサーの酒井幸菜さんが講師となり「名前を踊ろう」が開催されました。
1日目は新聞の動きを体で表現したり、体のあらゆる部位をつかって文字を書いてみました。
2日目は、宿題だったそれぞれの名前のフリをひとりずつ披露するのではなく4つのチームに分かれてグループごとで発表。そこに酒井さんが配置や役割、構成を即興で考えまとめあげていきました。
そして最後は全員で一斉にパフォーマンス!バラバラだった名前のダンスがひとつの作品にまとまり不思議と一体感がうまれていました。
生徒のみなさんにとってなかなか触れ合うことのない「アーティスト」という職業の酒井さんだけでなく、支える立場の塩尻AIRや信州アーツカウンシルについて紹介する時間もいただき「アート」に関わる多様な役割があることを知っていただく機会にもつながりました。

全体の構成の中での役割を考えながらアイデアをふくらませる

全体を通して、参加者やその保護者からは「これまでこういう形で芸術に触れる機会がなかったので嬉しい」という喜びの声が多く聞かれたのと、参加しているみなさんのイキイキとしている表情がなにより印象的な事業でした!

(文:コーディネーター佐久間圭子)

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