【レポート】「奏の森」収穫祭に行ってきました!
上伊那郡中川村、JR飯田線伊那田島駅の近く。ぶどう農園が広がる一帯の少し先に、「奏の森」はあります。明るく開けた森の中に入ると、子どもたちが自由に遊んでいて、見ているこちらも自ずと気持ちが穏やかになる場所です。自然とともに今ここで、つなぎつながれていく生を感じながら、いろんな人が集まって過ごしています。
奏の森には、さまざまな設備が整っています。水を使用せず、微生物の働きによって排泄物が肥料となるバイオトイレや薪ストーブ、ガスを使わない「かまどキッチン」、さらには「絶景アルプス薪ぶろ」(!)まで。今では、美しく気持ちのよい森になっていますが、ここはもともと暗く荒れた森で、近くのぶどう園では猿や鹿などによる被害に困ってしまうほどでした。そんなとき、奏の森を運営するNPO法人F.O.Pの代表である杉浦さんが見つけ、そこからみんなで整備してきました。
森の整備を日常的に行うなかで、伐採した木材は薪として利用したり、さらには加工して自分たちの力で「ミンナデビルド」で建物を建てたりと、何一つと無駄はありません。だんだんと森がきれいになっていくうちに、ミツバチたちが集まってきたり、森で食べるご飯も、害獣駆除のために殺さざるをえなかった鹿のお肉や、地元の農家さんのおいしい野菜に、自分たちで種から無農薬、無化学肥料で育ててきたお米や小麦を使って調理されています。生きること・暮らすことと、森やその地で生まれるエネルギーが密接につながり、活動すべてが循環しています。奏の森でのごはんは、自分の身体はいただいたものでできているという、当たり前だけど、ふだんコンビニなどの便利さ・手軽さに頼りきっている生活のなかでは忘れてしまいがちなことが、身にしみて感じられます。
-
「絶景アルプス薪ぶろ」「かまどキッチン」 -
明るく開けた森のなか
また、森では多様なバックグランドを持つ方が集まり、自然のなかでの暮らしを通してさまざまな表現や活動が生まれています。ギタリストにシンガーソングライター、サックス奏者、大工、農家、書家、イラストレーター、ダンサー、パティシエ、教員、介護福祉士。それぞれの専門性や知識をいかして、集まる皆さんと活動を共有しています。そして集まってくる方の多くが、子育てをされている親子連れ。奏の森で行われている野外保育「もりっこ」では、田んぼでお米をつくったり、絵本をつくったり、一緒に音楽を奏でたり、料理をしたり、木工教室、ダンスレッスンといったワークショップや映画の上映会も行われています。大人も子どもも分け隔てなく、自分の得意なことを持ち寄って、自分のやってみたい!をかなえることのできる場です。
そんな奏の森の取り組みをひろく知っていただくため、循環型の暮らしを表現につなげていくワークショップが10月に実施され、そこでできあがった「米米米(ベイベーマイ)ソング」が、収穫祭のこの日、いよいよお披露目されました。また引き続いて、奏の森で活動を行う「カナデル幸響楽団」のファーストアルバムリリースを記念したライブも行われました。
-
米米米(ベイベーマイ)ソング -
大人も(子どもも)ダンスの振りつけ・練習
-
大人たちが演奏しながら曲づくりをしていると… -
いつの間にやら子どもたちもバンドセッション!
「米米米ソング」は、これまでお米を育ててきた経験をもとに、感じたことや印象に残っていることをふせんに言葉で書いて共有するところから始まり、たくさん出てきたフレーズの中からどれを使って歌詞をつくるか、さらにはどんなメロディとコード進行をとるか、というところまでみんなで話し合いながら、形になっていきました。この10月のワークショップの時点で作曲、演奏、ダンスの原型がほぼできあがり、あとは、11月の収穫祭へ向けた練習を重ねるのみ!といったところで、練習期間を経るごとにメンバーはさらに増え、総勢27名の大所帯になったとか。私もやってみたかったと言って、一緒にダンスを練習するお母さんたちに、家に眠っていたギターを見つけ出して参加してくれるお父さんたちも。奏の森に集まったみんなの経験が、ひとつの表現になっていきました。
11月の収穫祭ではお天気の心配もあって屋内でのお披露目になったということもあり、さらにパワーアップした完全版「米米米ソング」は来年4月14日(日)に開催予定の文化祭で発表されるそうです。
-
収穫祭でのライブの様子 -
スペルト小麦を使ったケーキ
奏の森は、収穫祭や文化祭といったイベント以外の日も開いていて、森の中を散策したり、ちょうどタイミングが合えば、スペルト小麦(古代小麦)を使ったクッキーやケーキを食べることができるかもしれません。奏の森でいま何が起きているか?日々の様子は、インスタグラムのストーリーズでチェックすることができます!
(Instagram: @kanadenomori.site)
また、奏の森をベースに演奏活動を行う「カナデル幸響楽団」は、各地でイベントに出演されているほか、このたびファーストアルバムをリリースされています。森でこれまで起こってきたさまざまな出来事
…森を整備するきっかけから、整えてきれいになっていく過程、野外保育での子どもたちとの時間、スペルト小麦やお米の栽培、ミツバチたちと生きる豊かさなど…
をベースにしたオリジナル曲、演奏とダンスを通して、森や自然環境を整えていくことの大切さ、身の周りにある生の美しさを多くの人に伝えています。
奏の森に興味をもたれた方は、ぜひいつでも伺ってみてください。森と、森に集まる皆さんのパワーに触れることで、この自然のなかで生かされている私も、自分と周りを大切に、できることをやっていこうという気持ちになります!
(文・小野佳奈)
*
代表の杉浦歩実さんへのインタビューは、Shinshu Arts-Climate Campポッドキャスト「気候とアートのダイアローグ」(SpotifyおよびApple Podcast)で聴くことができます。
▽こちらから▽