NPO法人リベルテ「花とひらく 〜 路地を開き、ちんどんパレード〜」

信州アーツカウンシルにて支援しているNPO法人リベルテ。障がい者福祉事業と文化事業という2つの事業を中心に、長野県上田市にて活動しているNPO法人です。精神障がいや発達障がいがある方を対象に、アトリエでの創作活動や居場所づくりを行っているほか、創作活動でできた作品の販売も手がけるなど、福祉とアートを織り交ぜた独自の取組みを行っています。

そんなNPO法人リベルテでは、昨年度、長野県文化芸術活動推進支援事業として「路地の開き-リベルテの拠点「roji」の庭を使った文化と交流づくり事業-」を実施。アトリエである「roji(路地)」において、障がいをもつメンバーさん(通所者)と地域住民が一緒に公園(庭)づくりを行い、交流する機会を創出しました。

アトリエ「roji」の公園(庭)

本年度、信州ACが支援して実施している『路地の開き ー リベルテの福祉施設を開き多様な人との関わり合いをつくるアートプロジェクト ー 』では、昨年度の取組みを発展させる形で下記3つのプロジェクトを展開しています。

(1)昨年度の取組みを引き継ぎ、公園を拠点にメンバーさん(通所者)と地域住民や地元の高校生との交流を図るプロジェクト。
(2)公園を飛び出し、メンバーさんが直接街に出ていき、リベルテの活動を街に開いていくプロジェクト。
(3)(1)と(2)の記録や作品を展示するプロジェクト。

今回は、(2)の活動として先日行われた『花とひらく 〜路地を開き、ちんどんパレード〜』の模様をレポートします。

『花とひらく 〜路地を開き、ちんどんパレード〜』

プロジェクト名に”パレード”という言葉が入っているように、本プロジェクトは、リベルテのアトリエである「roji(路地)」を出発点に、シアター&ゲストハウス「犀の角」までの1キロ強の道のりを、メンバーさんや地域住民、上田市でコロナ禍をきっかけに立ち上がったソーシャルコミュニティ「のきした」参加者が入り混じって練り歩いていくというもの。roji近隣の駐車場で出発式をおこない、総勢50名以上の大人数で犀の角へと向かっていきました。今年2月の「のきしたオープンデイ」で、かさじぞうに扮した人々が上田市街を焼き芋を配った「かさじぞうパレード」の新たなバージョンでもあります。

  • 当日は見事な秋晴れ。暑いぐらいの陽気の中、半袖姿で犀の角に向かいます。
  • パレードの参加者の中には、楽器の演奏や大道芸を披露する人も。
  • メンバーさんお手製のお面をつけて歩く参加者。

性別や年齢、障がいの有無に関係なく全員がごちゃまぜになりながら練り歩くその姿は、まさにパレードそのもの。チンドン行列さながら、楽器を演奏したり、大道芸を披露する人、また、メンバーさんが作った手製のお面をつけて歩く人など、銘々が無理せず、自分の好きなことを好きなようにできる自由な時間が創出されていました。
また、このパレードはただ犀の角に向かって歩くだけではありません。道を練り歩きながら、通りすがりの方々にドライフラワーの花束を渡していきます。「花とひらく」の言葉通り、ドライフラワーを媒介に、リベルテのメンバーさんと地域の方がふれあい、交流するキッカケが街のあちらこちらで生まれていきます。

  • 道ゆく人にドライフラワーを渡す参加者。
  • ドライフラワーの花束

メンバーさんや参加者が手渡していったドライフラワーは、7月に小諸駅前の停車場ガーデンでメンバーさんが摘んだもの。それをart farmerの石坂杏子さんとメンバーさんが一緒にドライフラワーへと仕立て上げました。

7月、小諸駅前の停車場ガーデンでドライフラワーに使う花を摘むメンバーさんたち。

さて、そんなパレードも出発から約1時間を経て、終点の犀の角に到着。犀の角では、「のきした」メンバーがお出迎え。のきしたメンバーとデイサービスSoraのおばあちゃんたちが一緒に、地域から集めた野菜をもちいて作ったお漬物がふるまわれ、パレードの到着を祝いました。

  • パレードの終点、犀の角に入っていく参加者たち。
  • 犀の角ではお漬物やフルーツのふるまいも。
  • メンバーさん、パレード・のきした参加者による即席バンドも結成!
  • 最終的に70名近い方が犀の角に集まりました。

最後はメンバーさんらによる即席バンドのリードのもと、その場にいる全員で『花〜すべての人の心に花を〜』(作詞作曲/喜納昌吉)を歌い、大団円のうちに終わりました。

今回のこの取り組みは、昨年度実施したアトリエ「roji(路地)」での公園(庭)づくりがあったからこそ生まれてきた発想と言えるかもしれません。公園という、障がいの有無に関係なく誰もが自由に出入りでき、時には何もしなかったり、さぼったり、だらだらしていたりと、その人がその人のまま、無理せずいれる場所。そんな公園=共有地という考えを、パレードを通して街全体に広げていく。優しく、穏やかな手法でゆっくりと街に織り交ぜていく。このことは振り返り会の中で、リベルテ代表の武捨和貴さんがおっしゃっていた「ギリギリアウトにならない線、ギリギリセーフを狙ってプロジェクトを考えていく。安全安心なことばかり考えてしまうと、プロジェクトそのものが小さくなってしまう」という言葉にも表れています。障がい者福祉というと、通所者の安全性を考え、施設内でのケアやサービスが中心になりがちな中、パレードという方法を通して積極的に街にでていく。公園づくりというリベルテの活動を街の中に拡張していく。本プロジェクトは、アートと福祉を横断して手がけているリベルテだからこそ可能な、ギリギリのラインを攻めた非常に挑戦的な企画だったと言えるのではないでしょうか。

リベルテの事業はこれからもまだまだ続きます。ぜひご注目ください。

(文:コーディネーター 藤澤智徳)

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